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曲線が魅力の装飾バランス。スワッグ&テールと生地の「バイアス」取り。


本日は、ウィリアム・モリスの織物生地を使った、『装飾バランス』の提案せ事例をご紹介いたします。
リビング・ダイニングの幅400cmの窓辺を飾る上飾りは、ソフトタイプバランスの代表格ともいえる『スワッグ&テール』バランスです。

採用デザインは、1874年にウィリアム・モリスが手掛けた葡萄柄の壁紙『VINE・バイン』(MM3149)で、モリスデザインスタジオを展開する川島織物セルコンでは、織物で「パターン・オン・パターン」の構成と、葡萄のつるが流れるように渦を描くトレーサリー(モリスらしい更紗模様)を表現しています。
葡萄の葉と柳の葉、それぞれの質感の違いを織りと糸使いで巧みに表現しており、凹凸と光沢のコントラストが美しく、見る角度によって表情が変わる深みの織物ですが、生地が厚く硬いため、緩やかな曲線が魅力のスワッグバランスを仕立てる場合には、以下にご紹介する注意点に配慮する必要があります。
「バイアス取り」縫製。
生地の使い方と縫製の特徴

今回、スワッグタイプの上飾りを提案における際の注意点として、生地の組成、硬さと柔軟性、柄域の確認など使用する生地の特性を配慮する必要がありました。
柔らかい生地であれば自然に生まれる下方向へのなだらかなウェーブ(曲線)ですが、『バイン』の場合は生地が硬いため、生地の「タテ(縦)取り」や「ヨコ(横使い)取り」で仕立てると柔らかいスワッグ(曲線)を出すことが困難で、角ばったフォルムになります。
その様な課題がある中で、今回採用した「バイアス取り」縫製。
これは張りの強い生地を、縦横方向ではなく斜め方向に引いた時に生まれる特性に着目した縫製仕様で、硬く張りのある生地を使いながら柔らかなスワッグ(曲線)が求められる状況で使われる手法です。
バイアスとは「斜め」の意味で、通常生地はタテ・ヨコ地に対して90度で裁断する生地を、斜め45度に裁断するバイアスカットにより、布目の伸縮性が増す生地の特性を活かした裁断方法と加工をバイアス縫製と呼びます。
生地の縦横へのテンションに対しては抵抗が大きい生地であっても、斜め方向のテンションに対しては意外なほどの柔軟性を持つ特性を利用したもので、身近なところでは、服飾縫製の世界でも使われていますが、この縫製手法を組み合わせることにより、身体にフィットするやわらかな着心地ちやしなやかでなめらかなシルエットを得ることができます。
バイアスは機能的、装飾的に効果のある使い方でもありますが、布地の伸びがを考慮して縫い代を多めにとることと、バイアスカットで取り出せる生地の量が少なく生地のロスと要尺が多く必要になること、抽出した生地同士を縫い合わせる手間と技術が必要となるため、面積の広い窓装飾においてはよりオートクチュール感の高い仕立てとなります。
また、生地を斜めに使うため、無地以外の柄物で用いる場合は、スタイルで仕上げた時に感じる違和感の少ない柄である必要があります。
「バイアス」裁ちの実際

スタイル・デザインをもとに「型紙」を作り、45°の「正バイアス裁ち」を行っている様子。
バイアス裁ちは柔らかい生地の場合、生地1巾を20°~30°程度の浅いバイアスで仕立てることも可能です。
バイアスの角度が浅くなれば、生地1巾の範囲で作ることのできる型紙を大きくすることができるため、幅の広いスワッグの製作には向いています。

こちらは、2枚の「正バイアス裁ち」の型を上下に重ねた完成品の裏側と接ぎの様子。
生地の「タテ取り」で仕立たカーテンと左右のカスケード(テール)のシャープな印象と、生地の「バイアス取り」で仕立てたスワッグの柔らかなラインも馴染みも良く、イメージ通りのスタイリングとなりました。
「バイアス取り」に関しては、無地の場合では問題ないですが、大柄やストライプなど直線的なパターンを持つ生地の場合、上飾りには向かない生地もありますので都度確認が必要です。

続いてこちらは、エントランス・ホールの上下窓では、シングルスワッグの装飾バランスの様子で、手で引っ張り出した部分がバイアスのジョイント部分です。
上下で縫い合せたバイアスのジョイントはスワッグの内側に来るように仕立てるのがポイントになります。
バイアスを曲線でつなぐ技術は難易度が高く、メーカー縫製では対応してくれません。
当社では特殊なスタイル縫製については実績と信頼のある加工所に依頼しています。
以上、本日は曲線を活かしたスタイル・バランスのスタイリング事例を、生地の特性と縫製仕様の組合せを交えてご案内させていただきました。