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ウィリアム・モリス『アーカイブ コレクションⅡ』(壁紙編)
『The Archive CollectionsⅡ』
本日は、『モリス・アーカイブⅡ』 コレクション発表会「参加レポート(PART2)」「壁紙 編」についてご報告をさせていただきます。
ウィリアム・モリス『アーカイヴ コレクション』は、一昨年、モリス商会創設150周年を記念して発刊された “Morris Archive Collection” に続く、アーカイブシリーズの第2弾となり、今回はその発表会です。
当日のプレゼンターは、『MORRIS & Co.』のブランディングを中心に手掛け、ウィリアム・モリスのオリジナル資料の保管をはじめ、英国・サンダーソン社のアーカイヴ管理者として長年活躍された前・最高責任者のマイケル・パリー氏。
パリー氏は、モリス商会の成り立ちからサンダーソン社への継承、そして現代に至るまでの歩みをまとめた著書
『MORRIS & Co. a revolution in decoration』の著者としても知られています。
今回の発表会では、「ファブリック」に続き「壁紙」コレクションのリリースに至るまでの経緯を、さまざまなエピソードを交えながら丁寧に解説されました。
『STARAWBERRY THIEF(いちご泥棒)』(1883年)
ウィリアム・モリス 『アーカイヴ コレクションⅡ』の、「壁紙(Wall Paper)」の今回の目玉は、何と言っても前回(一昨年)の、 『アーカイヴ コレクションⅠ』において待望の復刻を遂げた、ウィリアム・モリスの代表作の筆頭格とも言える、1883年作・『STARAWBERRY THIEF(いちご泥棒)』の壁紙版のニューリリースにございました。
これにより、ファブリックと合わせてコーディネートが可能となりましたが、壁紙版『STRAWBERRY THIEF(いちご泥棒)』のパターンは、ヒダを持たせて表現するファブリックよりも平面的かつ連続的となるため、それに派生する僅かな微調整がパターンの中に行われています。
『STRAWBERRY THIEF』のファブリック

上の写真は、『STRAWBERRY THIEF(いちご泥棒)』のファブリックパターンを、平面構成として再デザインし、「壁紙」仕様にアレンジしたイメージ画像です。
このパターンの中で、外向きに対で描かれた2羽の「ツグミ」の尾の角度にご注目ください。
『ファブリック』パターンでは、ツグミの「尾」と「くちばし」を結ぶラインが、比較的水平に近い角度で描かれていますが、実はここに、モリスならではのデザイン上の工夫が隠されています。
『STRAWBERRY THIEF』の新作「壁紙」

そしてこちらが、『STRAWBERRY THIEF(いちご泥棒)』壁紙のデザインパターンです。
こちらのパターンでも、外向きに対で描かれた2羽の「ツグミ」と、その尾の角度にご注目ください。
『ファブリック(生地)』のデザインと見比べてみると、その違いがよく分かります。
『壁紙』パターンでは、ツグミの「尾」と「くちばし」を結ぶ角度が、『ファブリック』に比べてやや上向きに描かれており、尾のラインが斜め上方へと伸びることで、全体の構図に軽やかな動きを感じさせるデザインになっています。
お判りいただけますでしょうか? 上の写真は、マナトレーディング・東京ショールーム内の壁面展示の様子です。
このように、平面的に表現された『STRAWBERRY THIEF(いちご泥棒)』の壁紙パターンでは、外向きに対で描かれた2羽の「ツグミ」の尾の角度が、「水平」ではなく、わずかに「ハの字」状に傾けて描かれています。
この微妙な角度の違いにより、連続的に大柄で見たときに、ツグミ同士を結ぶラインがシャープな「ストライプ状」になってしまうのを防ぎ、壁一面に貼り上げた際にも、全体として柔らかく広がりのある印象を与えるよう工夫されています。
ちなみに、内向きに対で描かれている「ツグミ」同士のパターンは、もともと「ハの字」状の構図で描かれていました。
おそらく、これに合わせて外向きのペアもアレンジし、2つのサイズが異なるパターンの間に統一感を持たせたのだと思われます。
このように、アーカイブ(復刻)を行う際には、『ファブリック』と『壁紙』の両方が存在する場合、曲線表現を主体とする布と、平面表現を基本とする壁紙、それぞれの特性を踏まえてデザインを調整する必要があります。
以上は、パリー氏のご説明をもとに、私自身の考察を加えたものですので、必ずしも公式な見解ではありませんが、今後この2つのスタイルをご検討される方の参考になれば幸いです。
『Daisy(デイジー・ひなぎく)』について

新しい『Daisy』をご紹介する前に、まずはオリジナル版の『Daisy(デイジー・ひなぎく)』について簡単にご説明いたします。
『Daisy』は、1862年にウィリアム・モリスがデザインした、『Trellis(トレリス)』『Fruit(フルーツ)』と並ぶ、初期の代表的な壁紙作品のひとつです。
当初は「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を設立した後に試作的に印刷され、1864年から本格的に制作が始まりました。
花と花が絡み合うような複雑な構図が多いモリスの後期作品と比べると、『Daisy』のデザインはシンプルで、日常の暮らしに寄り添った素朴な魅力があります。
そのため、モリスのやさしい感性がもっとも伝わりやすい作品のひとつとして、今も愛され続けています。
参考までに、オリジナルの『Daisy(デイジー・ひなぎく)』のパターンイメージがこちらです。
新バージョン・『Daisy(デイジー・ひなぎく)』

オリジナルの 『Dasy』 のパターンに、より現代的でシンプルなインテリアシーンにもコーディネートできるようなアレンジを行い、また新たなカラーの追加を行って、幅広いインテリアシーンにお使いいただけるデザインにとしてニューリリースされたのが、新・『Daisy(デイジー・ひなぎく)』です。
ご覧のイメージ画像と、4配色のカラーバリエーションからもお分かりのように、今回の壁紙では「ベース」部分を無地にし、デザインパターンを縦横の整ったラインで構成することで、
すっきりとした印象にアレンジされています。
さらに、全体のトーンをやわらかく淡い色調に整えることで、現代の多様な文化圏のインテリアにもコーディネートしやすいデザインとして、新たにリリースされました。
本日ご紹介した作品はその一例ですが、ほかにも魅力的な「アーカイブ コレクション」が多数収録されています。
ご興味をお持ちの方は、ぜひ当社またはマナトレーディングのショールームにて、実際の質感や色合いをご覧いただければと思います。











